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昨日に引き続き『きっと、澄みわたる朝色よりも、』厳選サウンドトラックCDのレビュー(トラック7-16)です。注意事項もまったく同じですが、恥や誤解を恐れずに第一印象を書き綴ります。本編の内容に対する多少の含みがありますのでお気をつけください。
トラックリストは こちら
07. 夢見鳥の舞う園へ Fm
序奏は単体でも使われており、荒れ狂う嵐の中から圧倒的な存在感をもつ何かの到来を予感させます。その嵐が過ぎ去り、"紅葉"の旋律の最後の部分が借用されて静けさが訪れると、そこは既に別世界。見渡せば思わず溜息をついてしまうような"夢見鳥の舞う園"が光り輝く姿を現しています。
08. 憧憬への道程 A
流れるような美しいフルートの旋律によって憧れた風景のイメージがまず提示されますが、永くは続きません。急降下するバイオリンによって心象風景から現実へと引き戻されてしまいます。しかしそれに続く後半部によって、諦めることなく目標に向かって歩んでゆく様子が続く表されています。先行する力強い弦は笹丸を、それに続く軽やかなフルートはひよの歩く姿を思わせます。そこからフルートによって最初の旋律が再現されますが、伴奏はピチカートに変わり静かな印象で、同じ風景をひよの視点から捉えているのでしょう。そこにバイオリンがユニゾンで加わって主題が繰り返される様子は同じ風景を二人で共有しているようです。ふたたび先行する弦とそのすぐ後ろをついてゆくフルートが登場しますが、今度は憧憬からの移行がスムースになっています。二人で共に歩み、着実に憧憬へと近づいているのだということを感じさせます。
09. 学びの揺り籠 Am
和風の曲調ですが、ややアップテンポなのは笹丸の中に"他人より遅れてしまっている"というあせりのような感情があるからでしょう。旋律が多少ぶれても全体を通して安定しているリズムには、生徒たちをやさしく守っている学園の暖かさが表れています。暗い印象や冷たい印象はありません。
10. 生ある彩の祭 Am
紅葉のアレンジです。たっぷりと溜められてから奏でられる旋律は、色の失われていた世界を赤く染め上げてゆきます。
11. 古き熱を塗りこめし Dm
まさに急転直下といった曲です。曲全体を強く支配しているDの重低音は、たった今まで知覚していなかった、けれど足元に潜んでいた決して逃れられない深い闇を象徴しています。
12. 重きは歴史か人の業か Em
弦のトレモロによって重苦しくまとわりつく空気に支配され、ティンパニのロールによって足元から崩されてしまいそうな不安定さに襲われます。一見"歴史"と"業"が対立しているようにみえるタイトルですが、"業"は仏教的輪廻思想に基づいた"前世の因縁が死しても受け継がれてゆく"という意味をもつ言葉で、両者は同質のものであると言えます。最後のピチカートのリズムは"重きもの"自体からそれを迎えた無力な人間へと視点を移し、相対的に"重きもの"の強大さを浮き彫りにしています。
13. 深呼吸の時間 D♭
安定して刻まれるピアノの分散和音によって支配されており、外界から切り離され独自の時間の流れを持つ世界に入り込んだようです。調がD♭なので普通の世界(C)から少しずれたところにいる印象が強まっています。本編では"ドミソドー"というチャイムの直後にこの曲が流れるところがあるのですが、さすがに少し気持ち悪くなるので何か工夫をしてほしかったです。
14. 潜み、躍り、滲む Em
得体の知れない不安が、足元深くからじわりじわりと広がっていきます。そこに生まれる恐怖は"不安"そのものよりも、未だ全貌が明らかになっていないという未知性に向けられており、"既に手遅れではないのか"という焦燥感が心を覆ってゆきます。
15. 静寂に爆ぜよEm
"爆ぜよ"というタイトルにあるように、強烈なティンパニのアタックから曲が始まります。そこから展開されるリズムは(3+4)の七拍子で、明らかに異質な空間が展開されます。
16. 永久に咆哮を刻み込め Em
強大な世界が矮小な自分に対して牙を剥いているかのようです。脈動する能動的な強い意志とそれによる直接的な脅威を感じさせます。
一応説明しておきますが、タイトルの横のアルファベットは評価じゃなくて調ですよ。念のため。