haltarf; シベリア抑留中のきもおた日記

　月曜日に臓器の移植に関する法律の審議が参議院で行われますが、A案が可決される可能性があります。「A案？こどもにも移植できていいんじゃない？」と思われるかもしれませんが、その反面非常に危険性の高い案だと思います。私の理解するところが正しければ以下のようになる、あるいは可能性があります。読んでいて大変不快になる可能性があるので注意していただきたいのですが、決してあなたに無関係ではありません。雑記ばかり続いてしまって申し訳ありませんが、審議の前にこれだけはいっておきたいので簡単にまとめます。

　現状では、15歳以上で死亡した者が生前に臓器移植の意思を示しており、なおかつ家族が認めれば臓器提供ができる、とされています。また、脳死は人の死ではありませんが、上記の条件が整っていれば死体として扱い、移植が可能です。現在の日本では、あなたが意思表示をしない限りあなたの臓器が移植されることはありません。

A案：年齢を問わず、脳死を一律に人の死とし、本人の拒否がない限り家族の同意で提供できるようにする

　A案が可決された未来では、あなたが生きているうちに「絶対に自分の臓器を使うな」と意思表示をしていない限り、あなたは「自分が死んだら臓器を使ってもいいよ」と言ったのと同じことになります。この原則はこども、０歳児であっても適応されます。さらに、医学的に脳死と判定されれば死んだことになりますので、もし医師が判断を誤ったり、あなたが驚異の回復力や、奇跡の力で"死"から"生き返る"可能性があったとしても、あなたは死んだことになります。

　逆にあなたが臓器移植を必要としている場合、適合する臓器を持った人間が死に、生前の意思表示と家族の拒否がなければ、あなたにその臓器が移植される可能性があります。待ちに待った臓器提供が行われたとき、あなたはきっとこう思うでしょう。
「死んでくれてありがとう」
もしあなたの適合臓器をもつ人間が目の前にいたら、きっとこう思うでしょう。
「こいつ死んでくれないかな」

　もしも適合する臓器をもつ人間があなたの他に一人しか存在しない場合、"ネガティブ"に考えればその人が死なない限りあなたに臓器は提供されませんが、"ポジティブ"に考えればそいつを殺せば臓器はあなたのものです。

　もしもあなたのこどもや、愛する人が臓器移植を必要としている場合、適合する臓器をもつ人間を殺せば臓器提供が行われる可能性があります。型が分からなければ無差別に100人くらい殺せばもしかしたら適合者がいるかもしれません。100人で駄目なら1000人。1000人で駄目なら10000人に死んでもらいましょう。全く知らない人が何人集まろうが、愛する人の方が大事ではありませんか？

　もしもあなたのこどもが臓器を必要としていて、あなたが適合者である場合こどもはこういうかも知れません。
「そろそろ死んでくれないかな」
身の危険を感じたあなたはこう返事をすれば助かるかもしれません。
「もうちょっとまってくれ、いまからこどもを作るから。適合者ができたら"それ"を使えばいいだろう？」

　きりが無いのでこの辺りで打ち止めにします。以上は可能性の話で可決後の詰め方次第で防げるかも知れませんが、"Ａ案が可決されれば、積極的に他人の死を望む社会が実現する"のは間違いないでしょう。今まで閉ざされていた移植への道は大きく開かれますが、情報管理や公平性の維持など難しい課題もたくさんあると思います。
　仕事にも就かずにぶらぶらしていると「臓器以外価値の無いヤツ」と罵られてしまうかもしれませんよ。万が一にも臓器目当てに殺されたくなかったら自分の意思を明確にあらわした書面を弁護士に預けた上で「私は死んでも臓器提供しません」と書いたプラカードを常に携帯することをオススメします。「臓器提供絶対拒否」とプリントしたＴシャツや刺青なんかもいいかもしれませんね。

参考までに他の案についてまとめると、

B案：臓器移植の年齢制限を12歳とする
C案：脳死判定の基準を明確化
D案 15歳未満の臓器提供について、家族の承諾と第三者の確認があれば可能とする。

B案とC案は現状から大きな変化はありません。D案もそれほど劇的ではありませんが、もしもあなたの15歳未満のこどもが死んだ場合、悲しみに暮れているときにこう訊かれる可能性があります。「で、この死体の臓器移植してもいいですか？今すぐ返事してもらえないと資源が無駄になっちゃうんですけど」

　以上を踏まえた上で、halは別にA案が可決されても構わない、と思っています。みなさんはどうですか？


追記： 恥ずかしながら最新のニュースを仕入れいていなかったのですが、参議院ではA案、A'案、Ｅ案が審議されるようです。Ｅ案は一年間の先延ばし、A'案は脳死のうち臓器移植が行われる場合のみを人の死とし、家族の心情に配慮し、さらに三年ごとに見直しを行う、というものだそうです。さてさて、どうなることやら。