『きっと、澄みわたる朝色よりも、』発売から4日が過ぎ、多くの方がプレイを終えたようです。いろいろと不満やら憤慨やらが出てきているようですが、やはり今年最大の問題作のひとつになってしまいそうです。執筆している時点で批評空間をチェックしても標準偏差は26と通常の倍程度の点数のばらつきがあります。明らかに正規分布ではなく、解析をすれば三つのピーク(80-100の満足、50-80の不満あるけれど評価できる、50未満の不満爆発)に分離できそうです。不満の殆どは"○○ルートがない"、"えろがない"というところに集中していますが、halは完了と同時に冷静になる前に批評空間にレビューをアップし"キャラやえろなんかどうでもよい"とバッサリと切り捨てています。ここのブログにも書きましたが、『きっと~、』の魅力は別のところにあると思います。
確かに公式アナウンスではルートの実情について明言されていません。逆に考えるとメーカーに宣伝しているキャラクターのルートを保障する義務はないのですが、業界では"メインのキャラクターは攻略できる、えろがある"という共通認識が広く根付いています。さらには過去のpropeller作品では攻略できそうなキャラクターはだいたいルートがあるうえに、サブキャラのえろまでおまけでついています。これでは一部ユーザーから『きっと、~』が詐欺だと言われても仕方がない部分があります。
既に多くの場所で指摘されていますが、特定のキャラクターに強い思い入れを抱いてしまう人や、えろに期待してしまう人はプレイしないほうがよいです。『きっと、~』に裏切られたと感じた人が不満を述べ、如何に自分が落胆させられてのかを主張するのは結構なことだと思いますし、メーカーに対して"次からはちゃんとえろをいれろ"と訴えるのも同様に結構なことでしょう。しかしメーカーがその主張を受け入れる必要は必ずしもありません。なぜならばメーカーがユーザーの希望をすべて取り入れることは不可能であり、さらには"ユーザー"と規定される対象自体がメーカーと"ユーザー"の相互作用によって常に揺れ動いているからです。(えろげーの作品を芸術品と捉えるか電化製品と捉えるかでまた議論は変わってくるのですが、その話はここでは触れないことにします)
メーカーとしてユーザーの期待に対してどのように応えるのか、という問題はとても難しく、ある種のイデオロギー的な側面を持っています。過去の例を振り返れば、ユーザーの声をできる限り取り入れようとしたねこねこは一度死んでしまいました。moonstoneの『Gift』を境にした豹変振りはhalとしては残念でなりませんでしたが、結果としてブランドは以前よりも栄えています(たぶん)。Circusは外野から"曲芸商法"と揶揄されながらも大手ブランドの地位を維持し続けています。
『きっと、~』に話を戻すと、既に述べたようにpropellerの過去作品では多くのキャラクターについてルートやえろが用意されており、未発売の『はるはろ』も同様であろうことから、この作品は"えろげー"全体としてのみならずpropellerとしても異色の作品であるといえます。ルート構成について明言してしまえば、それは本編に対するネタバレが避けられず新たな問題を生じてしまいますが、例えばサブブランドで作品を出して少なくとも過去の自社作品とは違う毛色だとほのめかす、といった配慮があってもよかったと思います。
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